わくせいひつじの
アート制作日誌

.........................................................................................................................................................

3
地下街の迷宮の巻き
1日目
2週間近く空けてました。
さて、なぜか頭に浮かんできた地下街が今回のモチーフ。
.....................................................................................
下書きを進めます。


子供の頃、休みに祖母を訪ねるとき、
よく母に手を引かれて大阪梅田の地下街を歩きました。
.....................................................................................
9時過ぎまで。
今日は下絵だけで終了。
解き油のテレピンを使いきってしまった・・。
2日目
3時頃開始。
どういう風に描くか、迷っているので
筆が進まない。
なかなか見えてこない。この時間が一番しんどいのだ。

.....................................................................................
8前にやめる。
今までで一番早い時間。

3日目
2時半頃開始。
寒い・・。
なかなか乗ってこない。
新しく編集したカセットテープをかける。
メルヘンのパンが来たので買いに出て戻ると
なぜか調子がでる。
...................................................................................................


顔がのっぺらぼう。
顔から描かないのは初めてだ。
地下街でのドラマはまだ始まらない。
...................................................................................................
9時頃、204号にお邪魔する。
珈琲を飲みながらタイポグラフィーについて教えてもらう。
文字のデザインの事である。
絵とは対象的でさえある規律の世界なのだが、そういう意味でも面白いし、勉強になる。

寒さに耐えかね10時半に退出。

4日目
今日は1時半にはアパートに来た。
暖かい時間に制作するのだ。
ダウンも持ち込んだ。
...................................................................................................
夕方、204号のkai君が出稼ぎに。暖炉に薪をくべる為だ。

僕は頭の中がもうこんがらがっている。
25年前の地下街を描きながら、別の事を考える。
しかしいっこうに絵がまとまらない。
長期戦になりそうだ。


こないだのメルヘンのぱんを食べる。

...................................................................................................

奥行きが増す。

僕らは25年前にもすれ違ったのだ。

10時前に部屋を出る。
5日目
2時頃始める。
やはり完成が見えない。
今と違って地下街は薄暗く汚れているのだ。
...................................................................................................
30分程、204号で喋った以外
10時前まで描き続ける。
ちょっと飽きてきたなあ。。
でもまだ終わりそうにない。


6日目
今日は一日中寒い。
セラミックヒーターをつけても一向に温もらない。
んで3時間後くらい経って5時過ぎにようやくいつもくらいの温さに。
それでも寒いのでやってられない。
...................................................................................................
どうやら体調が悪かったようだ・・。
なんで絵なんて描いてるんだろう?などと考え始める。
あまり進まず。
9時には退出。
7日目
今日は2時にきて、ころころローラーですぐ掃除を始めた。
3時頃作業開始。
気温も温かいし、いつもの調子で音楽で踊りながら描くほど楽しくなる。なんだかすべてに感謝し出す程だ。
僕は一体どうなっているんだろう?
...................................................................................................
9時過ぎにやめて、隣の貝君と話していると11時近くになってしまった。
うん、今年中には終わらないなあ・

人が増えました。やっとこの絵が好きになってきた。


休止日
初めてゲストが見学にきました。

結局この日は風邪気味だったので、絵は描かず。
絵の完成は来年に延期となりました。

8日目
年が明けました。
午後3時前/ご無沙汰にアパートへやってきました。

...................................................................................................
夜9時半。
204号で珈琲とパンケーキを頂く。
cdデッキから「ロマンティックあげるよ」が流れてきた。
20年まえの水曜夜7時半の水泳教室の帰り道を思い出しました。
あの頃と暮らしてる場所が同じなんてね・・。

大人のふりして諦めちゃ、奇跡の謎など解けないよぉー。
...................................................................................................
10時に終了。
まだ完成しません。

男の子の表情が定まらない。


9日目
2時半開始。
一本の筆だけで描いている。
...................................................................................................
隣の部屋ではデザインの考察。
部屋を移動すれば考える事もかわっていく。
...................................................................................................
よく飽きずに一日中描いてられるなと思う。
いや実は飽きている。早く終えてしまいたいのです。

10日目
3時前に作業開始。
...................................................................................................
7時に204号で珈琲を飲んでいると、nhkと名乗る者が
部屋をノックしてきました。
残念ながらこのアパートにテレビを見る為の機械は存在しないので、丁重にお断りしました。
結論として彼は偽者だと言う事におちつきました。
...................................................................................................
今日は貝君がドリームチケット、
某ピーチマークの中華料理屋の半額チケットを入手したので
てくてくと歩いて、食べに行った。
我らが食べたのは五目あんかけそば。
1人きっかり300円なり。
...................................................................................................
アパートに戻ってしばらくすると、
今度は学生のボランティアグループの挨拶と称する珍入者が
お隣の204号をノック。
続いて僕の部屋にもやってきました。
今日はどうなってるんだろう。

学生を対象にというので、僕は絵筆を握りながら、
当方はれっきとした社会人である答えました。
...................................................................................................
地下街を描きながら一昨年死んだじーちゃんの事を考えました。
この絵の行き交う人たちのように、
多くの事はほんの0.01秒の宇宙時間のように
儚く過ぎ去って行くのだと思うと切ないような気がして
涙するのでした。

それにしても、貝君の指摘のようにこの絵の登場人物すべて
"手ぶら"である事に気がつきました。
まずい、みんなぶらぶらしてる人みたいだ・・。
鞄を描き足し始めました。


夜1時前まで作業。

11日目
絵を描き始める前に散歩にでました。
郵便局へ行ったあと、田んぼと塀の間の細い道を歩き、リサイクルショップを覗いていきました。
学生の頃より学生らしい僕です。
...................................................................................................
3時半頃描き始める。
今日は絵を見るなり完成かなと思いました。
もうこれ以上は広がりそうもありません。
後一日くらいで締めとなりそう。

僕はどこまで行けるのだろう。

12日目
絵を壁に飾る為にフックを木枠に取り付けます。

それが終わったあと204号に行ったので、絵を描き始めたのはもう7時を回った。
しかし今日は眠くて全然だめ。
もう完成なのに手数を増やしてしまったようだ。
9時には引き上げる。
.......................................................................................

この絵についてはもう終わりです。
幾つかの修正を覗いて。
それは機械的に処理するだけのものになる。

この絵を描く為の意識はもう戻らない。

この子を引くその手は失われるのだ。

この子は一人で歩き出さなければならない。
これから一人でこの地下街の迷宮を抜けねばならない。

13日目
2時にやってきた。
早く終わらさなければならない。
古い意識は捨てねばならない。

絵の解釈は見る人の自由だ。
やはり未来の事は分からない。
誰にも。
この手が失われるかどうかも。


完成



もくじ 次へ